槇野進也YOGAダイアリー
ヨガ指導者がつづる 健康と幸せの流れに乗るブログ
講義録『高齢者とタイマッサージ』⑧~「介護予防」
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 さて、田中さんに話を戻します。
田中さんの最大の楽しみは週2回の訪問入浴でした。




 皮膚は排泄器官でもあります。
ここが清潔に保たれないと病気になってしまいます。
また、皮膚への適度な刺激も大切です。
お風呂につかることによる温熱効果、水圧の効果、
私たちが足指の股まで全身をマッサージするように丁寧にこすっていきます。
そうすることによりさぁーと全身にめぐりが生まれます。
寝たきりのご高齢者のカラダがみるみる変化するのです。




 田中さんはもっとも困難で、かつ注文の多い利用者さんでした。
赤ちゃんのように首も据わっていない人でしたから、
入る方も入れる方も命がけだったのです。
その苦労話をするとこれだけで今日の時間が
終わってしまいそうになるので、しません(笑)






 コミュニケーション能力に何かしらの障害がある
高齢者といかに意思疎通を図るかは、
介護のみならずマッサージに当たるときも、
その大前提として重要なことがらです。




 田中さんとは、痰を吸引してほしいとき「口を長くあける」
息苦しいとき「両目を長く閉じる」
お湯が熱いとき「右目を二回ウインク」
など、私たちと入浴中のコミュニケーション方法を取り決めていました。
意思疎通の方法が確保されることにより、田中さんは安全にかつ安心して
お風呂に入ることができたのです。






 介護保険制度は突貫工事のように制定されたと、さきほど申しました。
ですからはっきりいって欠陥だらけです。
ですが、介護保険をいかに改正するかについては喧々諤々議論されていますが、
これを止めにしよう、なくそうという話はまず聞かれません。
高齢者介護は今後も介護保険とともに動いていくことでしょう。




 2006年には介護保険法が改正されました。
その際、『介護予防』という言葉がキーワードになりました。




 これまでは「介護を必要とする人=要介護者」と
「必要としない人」の2つの区別でしたが、
厚生労働省はその中間に当たる人々に着目し、
3つに分類したのです。それは、
「要介護者」
「虚弱高齢者」
「一般(元気)高齢者」
です。




 現在は介護を必要としないが、これからそうなってしまうかもしれない
「虚弱高齢者」に「介護予防サービス」、
具体的には運動や口腔ケア、栄養指導などのサービスで先手を打ち、
どんどん要介護者が増えてしまうことに歯止めをかけようというものです。







◆関連HP
『臨床タイ医学研究会』






講義録『高齢者とタイマッサージ』⑦~「介護サービスの種類」
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 介護保険で注目したい点は、ケアマネージャーを要としてご高齢者を取り囲むように、
「多職種が連携を組んで介護に当たっている」ということです。
 ですから、皆さんがこの輪に入るときはけっして1人でことに当たらず、
情報交換や協力し合う姿勢を忘れずにしていただきたいと思います。

 


 さて、ここで介護保険サービスについてご説明したいと思います。
では、配布した資料を見てください 』








  (参考資料)介護保険サービスの種類




☆「ケアプランの作成」
居宅介護支援サービス




在宅サービス


①「自宅に来てくれる」
訪問介護(ホームヘルプサービス)
訪問看護
訪問入浴
訪問リハビリテーション
居宅療養管理指導


②「通う」
デイサービス(通所介護)
デイケア(通所リハビリテーション)


③「泊まる」
ショートステイ(短期入所生活介護)


④福祉用具のレンタル・購入・住宅改修




施設サービス


「終の住処」介護老人福祉施設
「在宅復帰を目指す」介護老人保健施設
「医療ケアを受けられる」介護療養型医療施設




その他


① グループホーム
② 介護付き有料老人ホーム
③ 小規模多機能型居宅介護
④ 夜間対応型訪問介護




市町村独自のサービス


配食サービス・紙おむつの支給・訪問理容(美容)・緊急時連絡システム…




 よろず相談窓口


・地域包括支援センター
・在宅介護支援センター









 『 まず介護保険のサービスを利用する際には、
必ずケアプランというものを作成します。
どのようなサービスをどれくらい利用するのかを計画するのです。
『居宅介護支援』というのがこれに当たります。




 介護サービスは大きく二つに分けることができます。
ひとつは、在宅サービス、もうひとつが、施設サービスです。




 在宅サービスの要といえば、やはり訪問介護(ホームヘルプ)サービスでしょう。
自宅にヘルパーが訪問し、入浴、排泄、食事等の介護や日常生活のサポートをします。




 デイサービスとデイケアの違いを確認しましょう。
どちらも送迎により日帰りで施設に通いますが、
デイサービスは食事や入浴、趣味活動などで日中を過ごし、
デイケアは理学療法士、作業療法士などのリハビリを受けることができます。




 施設サービスは3つあります。
「介護老人福祉施設」、これは特別養護老人ホームとも呼ばれています。
ご高齢者の終の住処となる場所で日常生活上の介護を受けることができます。
「老人保健施設」は、自宅復帰を目指したリハビリを中心に
およそ数ヶ月間を過ごす場所です。
「介護療養型医療施設」、ここは長期にわたり医療ケアを
受けることができる場所です。




 さて、私たちが介護についてや、ご高齢者の暮らしについて何か困ったとき、
無料で相談に乗ってくれるよろず相談窓口があります。
それが「地域包括支援センター」と「在宅介護支援センター」です。
しかも電話での受け付けもしています。



 ちなみにここ世田谷区には地域包括センターは、
(「あんしんすこやかセンター」という名称になっていますが)27箇所、
在宅介護支援センターは21箇所ありました。
結構たくさんあると思いませんか?



 
 これはみなさんに宿題ですが、ご自身が暮らす、もしくは働いている地域の
地域包括や在宅介護支援センターの所在と電話番号を調べてください。
いざと言うときに役立つことでしょう。






◆関連HP
『臨床タイ医学研究会』






講義録『高齢者とタイマッサージ』⑥~「自立支援」
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 そして、1人の要介護者(介護が必要であると認定された人)に
1人のケアマネージャーがつきます。
ケアマネージャーが要介護者と相談しながら
介護計画(ケアプラン)を作成します。




 田中さんのケアプランは次のようなものでした。


月~土の朝、訪問介護(ホームヘルパー)が整容と歯磨き、朝食
週二回、訪問看護 全身清拭と皮膚の処置(床ずれ、胃ロウ部、喉)
週二回、訪問入浴
週一回、ドクターの往診
月一回、歯科のドクター
週一回、訪問リハ
 

 介護サービスは料金の1割を要介護者(ここでは田中さん)が負担します。
田中さんは要介護5の利用限度額35万のギリギリまで使いました。
その1割の3万5千円を本人が負担します。
本当はもっと利用したいのですが、それ以上の利用分は
全額負担しなければならず、それでは家計に多大なダメージとなります。




 田中さんはもともとご夫婦で商売をなさっていました。
田中さんが寝たきりになってからも、
奥さんは介護をしながら仕事を続けることができました。
それも、介護保険という社会資源のお陰だし、
それをフルに活用できた田中さんの知力と執念によるものだと思います。






 田中さんにはもうひとつの願いがありました。
それは「自分と同じように苦しんでいる、ALS患者のために尽くしたい」
というものでした。田中さんはALS協会の役員を勤められていました。
またパソコンを使って日々、全国から送られてくる相談に応じられています。
田中さんに救われたというALS患者やそのご家族は、
相当な数にのぼると聞いています。




 介護保険には『自立支援』という理念があります。
それは「たとえ介護が必要になっても、人間らしくその人らしい暮らしを
つくり出して行くことが大切である」という考え方です。
 田中さんのような方は一昔なら、生活弱者として行政に保護される立場に
あったかもしれません。ですが、こんにちではたとえ寝たきりの状態にあっても、
当然の権利として介護サービスを利用することができるのです。
田中さんは王者のように誇り高く振舞っておられました。




 田中さんは延命治療をして良かったと述べられています。
ALSと診断されてから19年、いまだ健在です。
 「呼吸器を装着しても、苦しい日よりも、楽しい日の方が遥かに多いですから」
とふり返られています。






◆関連HP
『臨床タイ医学研究会』






講義録『高齢者とタイマッサージ』⑤~「介護保険を利用するには?」

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 田中さんは病気によって65キロの体重が40キロ代まで激減しました。
飲み込み(嚥下)が悪くなったからです。
 そこで胃ロウというものを作ります。
お腹に鉛筆くらいの穴を開け、パイプを通し、
胃に直接、栄養を注入するのです。
 胃ろうによって栄養状態は改善されましたが、
ここで田中さんは食べることの喜び、味わうことの幸せを失うのです。




 次に呼吸のことです。さきほど3年から5年で死に至るとお話しましたが、
死の直接的な原因は呼吸困難によるものです。




 田中さんは究極の選択に迫られました。
このまま死ぬか?それとも…。
 延命する方法もありました。それは人工呼吸器をつけることです。
喉に蛇口ほどの穴を開け、そこに人口呼吸器をつなぎます。
この機械は電子レンジほどの大きさです。
喉と機械は蛇腹のパイプにつながれます。
これによって空気が自動的に送られるようになるのです。
 



 田中さんは命をつなぐ代わりに声を失うことになります。
喉に穴を開けるわけですから。
コミュニケーション能力が大幅に失われます。
その喪失感は壮絶なものだといいます。




 田中さんは生きることを選びました。
ですが、反対の選択をして亡くなった方も私は知っています。






 では、田中さんの願いとは何だったのでしょうか?
願いは2つありました。その1つ目は、
「家族にできる限り負担をかけないようにして、
自分のカラダを管理して在宅生活を続けたい」というものです。
寝たきりの方を介助するご家族の労苦はたいへんなものです。
願いを叶えるためには社会資源をフル活用する必要がありました。
その中心が介護保険だったのです。








 さて、高齢者が介護保険を利用するにはどうしたらいいでしょうか?


 

 いきなりヘルパーステーションに電話して、
「介護に来て下さい」といっても駄目です。
 とにかく、『役所の介護保険担当窓口』に行くこと!
役所に自己申し込みをしないと介護保険サービスは利用できません。
そして、「訪問調査」があり、申し込みから30日以内で「要介護認定」が出ます。




 要介護認定とは、その方がどれだけ介護を必要とするかの度合いです。
全部で7段階あり、それぞれで利用できるサービスや月々の利用限度額が異なります。
田中さんはもっとも重度の要介護5でした。






◆関連HP
『臨床タイ医学研究会』






講義録『高齢者とタイマッサージ』④~「喪失のプロセス」

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 私は介護保険制度が始まる少し前に、
介護福祉の世界に飛び込みました。




 そしてまずは5年間、主に訪問入浴サービスに従事しました。
毎日特殊車両に乗って各家庭を訪問し、簡易浴槽をセッティングし、
ベッドから担架で搬送して、入浴のお手伝いをします。
自宅のお風呂に入れない方、つまり寝たきりの方の利用が多いサービスです。




 私はのべ人数でおよそ5千人の方々にお風呂に入っていただきました。
この仕事でつぶさにご高齢者の身体に触れ、
観察できたことは私にとって貴重な体験となりました。








 これから訪問入浴で私が出会ったある一人のご高齢者をケースに、
介護保険についてお話したいと思います。




 お名前を仮に田中さんとしましょう。




 ご存知のように高齢者は様々な病気、病歴を持っています。
(もちろんそうではない方もいます)
 田中さんは『ALS(筋萎縮性側索硬化症)』という病気に罹っていました。
ALSとは全身の運動神経が侵される病気で、筋肉が硬縮し、やせ衰え、
およそ3~5年で死に至る難病です。
1年で10万人に1人の割合で発症するといいます。




 手でモノをつかむことができなくなります。
歩行能力が奪われ、車椅子の生活になり、そして寝たきりになります。
 私がはじめてお会いしたときの田中さんは、
まばたきや僅かにあごや指を動かすことしかできませんでした。




 観察していくと、高齢者は「喪失」のプロセスを経ていると感じられます。
身体の衰えや病気から、いままで当たり前にできたことが、できなくなっていきます。
また、記憶力の衰えもあります。
さらには、愛する人や親しい友との別れもあります。
最後には自分自身がこの人生とお別れしなければならないのです。






◆関連HP
『臨床タイ医学研究会』






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